私はドキュメントツールのNotionを約3年、Obsidianを約1年ほど使ってきました。その中で、はっきりと感じていることがあります。
それは——ドキュメントツールを選ぶことは、単なる効率化ではなく「自分の思考の型」を選ぶことだということ。
- Notionは「整える」ためのツール。
- Obsidianは「広げる」ためのツール。
見た目は似ていても、その世界観はまったく違います。
チームで動くならNotion一択。解決してくれる課題と機能からこれは揺るぎません。
一方、個人で使うなら、NotionとObsidianに向いている人は異なり、その選択はiPhone派とAndroid派の思想の違いにも重なっているように感じます。
この記事では、私自身の実体験をもとに、「NotionとObsidian、どちらを選ぶべきか」を課題・機能・思想の3つの視点から整理していきます。
起業していた頃は、Notionを会社の情報基盤として導入し、その後もスタートアップや中小企業での導入支援・運用リードを担当してきました。一方で、AI時代の到来とともにマークダウン形式の強みを知り、Obsidianにも惹かれて個人的に研究・実践を重ねています。
結論①:チーム利用なら迷わずNotion

ツール選びで迷う時間ほど、生産性を奪うものはありません。結論から言えば、チームで使うならNotion一択です。
理由は、情報の整理整頓とチーム利用に適した機能の2点が圧倒的に優れているためです。
1. 情報の整理整頓が自然にできる
私は、起業して会社を経営していた頃から現在のスタートアップ勤務まで、約3年以上Notionを使い続けています。その中で強く感じているのは、「情報を整える」という本質的な課題にNotionが正面から向き合っているということです。
導入前、チームの情報は散乱していました。
- GoogleドライブやSlackスレッドに資料が点在し、探すのに時間がかかる
- 同じテーマの資料を別メンバーが重複して作成
- 「どれが最新版かわからない」状態が頻発
- 新メンバーのオンボーディングに時間がかかる
これらは多くのチームが抱える典型的な課題です。それらを解決するために、アジェンダや議事録、システム開発の仕様書、戦略資料、プロジェクト・タスク管理をすべてNotionに集約しました。
情報整理という観点では、NotionもObsidianも優秀
実は、情報の整理自体はNotionでもObsidianでも可能です。両方ともリンクやタグ、階層構造を活用して情報を体系的に整理できます。
Obsidianではマークダウンファイルをベースに、フォルダとリンクを組み合わせて柔軟な構造を作ることができ、個人単位の知識整理には非常に向いています。
むしろ、情報を“自分の頭の中のように”管理するという点では、Obsidianのほうが深く掘り下げられる側面もあります。

ただし、問題は「個人の最適化」か「全体の最適化」かです。Obsidianは自由度が高いぶん、各メンバーの使い方やフォルダ構造、リンク設計がバラバラになりがちで、結果として、チーム全体では情報の一貫性が保ちにくくなります。
全体最適を図るならNotionに軍配が上がる理由

チームや会社全体で「全体最適」を図るのであれば、Notionに軍配が上がります。
その理由はシンプルで、使い心地・わかりやすさ・学習コストの低さが圧倒的に優れているからです。
- 使い心地:UIが直感的で、フォルダやリンク構造を意識しなくても整理が進む
- わかりやすさ:情報の階層がビジュアルで見やすく、ドキュメント間の行き来もスムーズ
- 学習コスト:初めて触る人でも“なんとなく使える”感覚があり、導入ストレスが少ない
導入をリードする側にとっても、使う側にとっても、Notionはとっつきやすく続けやすい。特に、チーム全員がすぐ理解できる設計思想が他のツールにはない強みです。

結果として、チーム全体で情報整理の文化を共有でき、プロジェクトやナレッジが「属人化」せず、「仕組み化」されていく。これが、Notionが組織に向いている最大の理由です。
| 比較項目 | Notion | Obsidian |
|---|---|---|
| 情報整理の自由度 | 高い(構造化しやすい) | 非常に高い(自由度重視) |
| 全体最適のしやすさ | ◎(統一しやすい) | △(個人ごとに分散しやすい) |
| 学習コスト | 低い(UI直感的) | 高い(設定・設計が必要) |
| 初期導入のしやすさ | スムーズ(テンプレート豊富) | 難易度あり(構築前提) |
| 運用の一貫性 | 保ちやすい | 保ちにくい |
| 見た目・UI | 美しく統一感あり | シンプルだが無骨 |
| チーム導入の負担 | 少ない | 多い |
つまり、情報整理という点では両者とも優秀だが、チーム全体で効率的に運用するならNotionが最適解。
Obsidianは個人の知的探求に向き、Notionは組織の知識管理に向く。その違いを理解して選ぶことで、ツールの力を最大限に引き出せます。
2. チーム利用に適した機能が揃っている
もう一つの理由は、Notionがチームの運営に必要な機能を網羅的に備えていることです。単なるドキュメント共有ツールではなく、チームそのものの“神経系”として機能します。
- 同時編集機能:複数人がリアルタイムで作業でき、履歴も残る
- 権限設定:ページごとに閲覧・編集・コメントの範囲を明確に制御
- データベース連携:ドキュメントを一覧表示、カレンダー表示、カンバン表示、ガントチャートなど多視点で管理
- AI機能:チーム内のドキュメントを横断して検索・要約・生成が可能
- テンプレート:議事録や週報、プロジェクト進行表などを共通化して再利用
これらの機能が組み合わさることで、チーム全体が同じ地図を見ながら動けるようになります。

ドキュメントが単なる記録ではなく、「次のアクションの起点」になる。この構造は、Googleドキュメントやスプレッドシートを超えた、知識をチームで成長させるための設計だと感じています。
一方、Obsidianはローカル前提のため、同時編集やアクセス権限の制御は不得意。チーム全員でのナレッジ共有を想定していません。個人の深い思考には向いていますが、チームで共通の認識を保つには不向きです。
NotionとObsidianの比較(チーム視点)
| 比較項目 | Notion | Obsidian |
|---|---|---|
| 想定ユーザー | チーム・組織 | 個人 |
| 同時編集 | 可能(リアルタイム) | 不可(ローカルベース) |
| 権限管理 | 詳細に設定可能 | 基本なし |
| 検索・リンク | ページ・DB単位で整理 | ファイル単位で手動管理 |
| データの保存 | クラウド | ローカル |
| オンボーディング | 簡単(直感的UI) | 難易度高(設定前提) |
| AIとの連携 | 標準搭載(公式統合) | 外部ツールと連携が必要 |
| コラボレーション | 得意 | 不向き |
結果として、Notionは情報を整理し、チームの生産性を底上げするための設計思想が徹底されています。
ある程度決まった枠組みや型の中で整った秩序を保ち、誰が見ても理解できる状態にできる。チームが成長するほど、その真価がわかり、情報の価値を高めてくれると考えています。
だからこそ、チームで使うなら迷わずNotion。それは単なる“使いやすさ”ではなく、チームが一枚岩で動くための設計思想そのものといえるでしょう。
結論②:iPhone派ならNotionを選ぶ理由

個人で使う場合も、Notionは安定感が際立ちます。理由はシンプルで、“完成された体験”を提供する設計思想が貫かれているからです。
考えてみてください。なぜiPhoneを選ぶのか。
それは、箱を開けた瞬間から完成された世界が手に入るからです。見た目も操作も感覚的で、説明書がいらない。細かい設定をしなくても、最初から“ちょうどいい”状態に整っている。ユーザーは仕組みを理解しなくても、そのまま日常に溶け込める。
Notionもまさに同じです。
使い始めたその瞬間から、整っている世界に入れる。自由度はObsidianほど高くないものの、その代わりに「美しく整う」ためのデフォルト設計があります。
Notionの“完成された体験”の具体例
1. テンプレートが“間違いない雛形”を示してくれる
Notionには、「テンプレート」という機能があります。
これは、ページの内容を毎回ゼロベースで作成するのではなく、テンプレートを読み出すことであとは内容を書いていくことに集中できる機能です。
「どう作ればいいか」は最初だけでよくて、次からは「すぐ書ける」状態を作ってくれます。



また「どう作ればいいか」も公式やコミュニティが公開しているテンプレートをインストールすれば今すぐ書ける状態となります。

この“書き出しの迷い”を消してくれる点が、iPhoneの「すぐ使える」体験と同じです。
2. 制限があるからこその創造性
Notionは、文字の装飾や余白の取り方、テキスト配置などを細かく調整できるようで、実際にはかなり制限されています。
フォントは数種類だけ。文字サイズも大きく変えられず、レイアウトの自由度も最小限。でも、その“自由の少なさ”がちょうどいいんです。

フォントを選び、余白を詰め、デザインを整える──そんな判断を全部ツールに任せられるから、私たちは「書く」ことにだけ集中できる。
構成やデザインを考える前に、まず手を動かせる。ページを開けば、すでにバランスの取れた余白と整った構造が用意されていて、ただ文章を流し込むだけで、それなりに“見栄えのいいノート”ができあがるのです。
たとえば、日記を書くときも、アイデアメモを残すときも、見出しブロックやトグルリスト、引用など、基本のブロックを並べるだけで自然と整う。整っているから、書き出すハードルが下がる。書き出せるから、考えが深まる。
これは、iPhoneが「それっぽく」ホーム画面を整えてくれたり、余計な設定をしなくても快適に使えるのと同じです。

完璧な自由よりも、ほどよい制限があるほうが創造的になれる。Notionはその原理をデザインに落とし込んでいるツールだと思います。
ObsidianがiPhone派に向かない理由
Obsidianは、自由の塊のようなツールです。フォルダ構造もリンク設計もすべて自分で決められ、テーマやプラグインを組み合わせれば、まるで自作アプリのように自分好みに育てられます。
ただし、この「何でもできる」は、同時に「すべて自分で考えなければならない」ということでもあります。
iPhoneのように“最初から整っている世界”に慣れている人にとっては、Obsidianの初期状態は驚くほど“未完成”に見えるでしょう。
最初に開いた画面はまっさらな黒いノート。フォントも、配色も、余白も、自分で決める必要がある。

ノート同士のつながりを可視化するグラフビューも、知識の海を自在に泳げる人にとっては刺激的ですが、整理された道筋を求める人には“どこから手をつけていいかわからない”迷路のようにも映ります。
さらに、Obsidianは設定やプラグイン導入の学習コストが高く、使いこなすにはある程度の技術的理解と試行錯誤が必要。その分、ハマる人には底なしに面白い世界ですが、“完成された体験”を好むiPhone派にとっては、自由が多すぎてかえってストレスに感じることもあります。
言い換えれば、Obsidianは「カスタマイズを楽しめる人のためのAndroid」。一方、Notionは「最初から完成された美しさを信頼する人のためのiPhone」。
どちらが優れているという話ではなく、どちらの世界に“心地よさ”を感じるか。それが今回この記事でお伝えしたかった思想によるツール選びです。
結論③:Android派ならObsidianを選ぶ理由

一方、Obsidianは、自由と創造のためのノート。Notionとは真っ向逆を行く思想です。
最初に開くと、そこにあるのは真っさらな黒い画面だけ。テンプレートも、構造も、ルールも何もありません。
だからこそ、自分で世界を設計できる人にとって、これほど面白いツールはありません。まさに、Androidを選ぶ人が“自分で設定し、自分好みに仕上げていく”ように、Obsidianもまた、使い手の個性をそのまま反映できる設計思想でできています。
1. 自由に設計できる“未完成のキャンバス”
Obsidianの魅力は、すべてが自分次第であること。ページの構成、リンクのルール、フォルダの構造──すべて自分の頭の中の整理の仕方に合わせて設計できる。
たとえば、アイデアノートを作るとき。
Notionではテンプレートに沿って情報を整えるのに対し、Obsidianでは1枚の白紙に思考を落とし込み、
必要に応じて他のノートと自由にリンクをつなげていく。構造を決めるのはツールではなく、自分自身。
この“自分で決められる感覚”は、Androidのホーム画面をカスタマイズするのとよく似ています。アプリの配置も、ウィジェットのデザインも、ショートカットの動作も、すべて自分の手の中にある。
そのような自由度の高さこそが、Obsidianの真骨頂です。
2. 思考を「広げる」ための2つの機能:Canvasとグラフビュー
Obsidianが他のノートツールと一線を画すのは、思考を“整える”だけでなく、“広げる”ための仕組みがあることです。
ここがNotionとの大きな違いだと思っています。
Canvas:思考を可視化するホワイトボード
Canvasは、FigJamやMiroのようなホワイトボード機能。

ノートや画像、図形を自由に並べ、矢印で関係をつなげていけます。しかも、既存のノート(Markdownファイル)を直接埋め込めるため、テキストの整理とビジュアルの発想を往復できる。
これはまさに、頭の中のマップをそのまま描き出す体験です。
日々アウトプットしてきた情報をテーブルに並べてみて、つながりを探したり、整理したりして思考を深化できる機能がObsidianひとつで実現できます。
グラフビュー:知識を“つなげて見る”
グラフビューは、Obsidianを象徴する機能のひとつです。自分が書いたノート同士のリンク構造を、点と線で可視化してくれます。

1つひとつのノートが“点”として配置され、それらが相互リンクを通じて“線”で結ばれていく。まるで、自分の思考がそのまま神経網のように描き出されていく感覚です。
たとえば、読書メモ・会議メモ・アイデアスケッチ──それぞれ別々に書いていたノートが、グラフビュー上では1本の線でつながることがあります。
- この本で書かれていた概念と、あの会議の議題が重なる
- このキーワード、別のテーマでも出てきていたな
そんな偶然の発見が、Obsidianでは日常的に起き、起こせるのです。
点と点がつながり、思考の網が広がる瞬間です。それは、スティーブ・ジョブズが語った “Connecting the dots” をツールの上で擬似的に体験するようなもの。意図せず書き溜めてきた断片が、ある日ふと、線で結ばれて新しい発想に変わったときは、感動を覚えるほどです。
さらに、グラフビューではノートの“重なり”も見えます。
中心に近いノートほどリンク数が多く、周辺にあるノートはまだ孤立している。この構造を眺めることで、自分が今どんな領域に関心を寄せているか、どこがまだ未開の領域かが一目でわかります。
知識を管理するのではなく、知識そのものを観察する──それがObsidianの思想です。
この2つの機能は、思考を閉じ込めるのではなく、拡張するための装置。つまり、Obsidianは「ノートを取る」ツールではなく、思考そのものを探索するツールなのです。
3. カスタマイズが“学び”に変わる
Obsidianには、テーマやプラグインを通じて無数の拡張が存在します。

タスク管理、Zettelkasten運用、AI連携、スライド生成──必要に応じて、どんな形にも変化していく。
正直、学習コストはとても高いと感じています。プラグイン導入や設定には時間がかかるし、自分で設計しなければ何も始まらない。
以下は、Obsidianで購入した書籍を整理している私のデータベースですが、このデータベース一つ作るのもNotionよりややクセがあります。もちろんその分カスタマイズ性はNotionよりも優れています。

けれどその過程で、自分がどう情報を扱い、どう考えているかが見えてきて、自由の中で試行錯誤を重ねることが、思考の深さにつながっていく感覚があります。
Androidを愛用する人が、自分で設定をいじりながら愛着を深めるように、Obsidianもまた、“手を入れるほど自分に馴染む”道具です。
NotionとObsidianの対比:整うか、広げるか
| 比較軸 | Notion | Obsidian |
|---|---|---|
| 世界観 | 整った道具 | 自由な実験場 |
| 利用スタイル | チームで使う | 個人で深める |
| 学習コスト | 中程度 | 高め |
| カスタマイズ性 | 限定的(iPhone的) | 無限(Android的) |
| オフライン対応 | 弱い | 強い |
| AIとの相性 | 良い(公式統合) | 非常に良い(Markdown) |
| 思考の方向性 | 整える・体系化する | 広げる・つなげる |
| 料金 | 有料前提 | 無料でもOK(同期は工夫が必要) |
- Notionは“整える思考”のツール。
- Obsidianは“広げる思考”のツール。
Notionは、構造の中で安心して考えたい人に向いています。整った世界で、迷わず、心地よく使える。それはiPhoneのように、完成された環境の中で思考を整える体験です。
一方のObsidianは、未知を探りながら考えたい人に向いています。自由に設計し、偶然のつながりを楽しめる。それはAndroidのように、自分の手で世界をつくる体験です。
どちらも単なるドキュメントツールではなく、「どう考えたいか」を映す鏡です。
- チームで成果を出したいならNotion。
- 美しく整った環境を信頼したいならNotion(iPhone派)。
- 自分で構築し、偶然から学びたいならObsidian(Android派)。
ツールを選ぶことは、考え方を選ぶこと。だから「どっちが優れているか」ではなく、「どっちが自分らしいか」で選ぶ。それが、AI時代の知的生産における、最も本質的な選択だと思います。
私自身、まだまだ使いこなせていないので(特にObsidian)、情報共有とかできれば嬉しいです!

